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東京税理士会豊島支部所属

骨髄提供体験記

(1)きっかけ

骨髄バンクにドナー登録したのは今から10年以上前になります。新聞の広告に骨髄バンクのことが載っていて、血液の病気で苦しんでいる方に少しでもお役に立てれば、という思いからドナー登録を決意しました。

(2)骨髄提供までのながれ

 白血病等により正常な血液が造れなくなった場合に、患者さんの骨髄(血液のもととなる造血幹細胞があるところ)を健康な人(ドナー)から提供された骨髄にかえて病気を根本的に治そうというのが骨髄提供です。このとき白血球の型(HLA型)の一致が必要となり、兄弟姉妹間で4分の1の確率で一致しますが、親子ではまれにしか一致せず、非血縁者(他人)間では、数百から数万分の1の確率でしか一致しません。このため広く一般からドナーを募る骨髄バンクが必要となるのです。

 骨髄採取に際して、ドナーは通常3~5日の入院が必要です。(通常採取の前日に入院し、採取後2~3日で退院できます。) 手術室で全身麻酔をして腸骨(腰の骨)から専用の針を刺して行い、患者さんの体重に応じて500~1,000mL採取します。採取後腰に鈍痛がしばらく残りますが通常一週間前後でなくなります。

 患者さんは、骨髄移植の約2週間前から準備をして抗がん剤の投与や放射線の照射を受け、造血幹細胞は壊され、血液が造られなくなります。激しい吐き気や全身の脱毛等の副作用に耐えながら、命がけの治療に取り組むことになります。移植当日、ドナーから採取した骨髄液は通常の輸血と同じように、点滴で患者さんの静脈から注入されます。その後無菌室で拒絶反応や感染症などに注意しながら、安静に過ごします。やがて移植された骨髄液が働きはじめ、正常な血液を造るようになると、一般病棟に移り良好な経過をたどれば、退院し、社会復帰することができます。

(3)骨髄提供をしてみて

 ドナー候補者となってから、実際に骨髄採取するまでに約半年かかりました。その間、血液検査等をするために病院に何度か行かなければならないし、提供の意思表示は自分だけでなく家族同意も必要です。そして提供時に3日間入院しました。スケジュール的なことや、人の命にかかわることであり精神的なプレッシャーもあるため、それなりの覚悟がなければ出来ないことだと思います。提供した患者さんとの接触は不可能で、1年以内に2回までの手紙のやり取りのみが許されています。骨髄提供はあまり達成感のない善意のボランティアだと思います。

 それでも全身麻酔から醒めたときの安堵感や、患者さんから手紙が来たときの感動は今でも鮮明で思い出すと涙が込み上げてきます。骨髄提供を体験して思ったことは、本当の幸せとは特別なことではなく平凡だけど健康で平穏に生活が出来るという普通のことだと実感しました。日々の生活そのものに幸せを感じたり、感謝をするということはなかなか難しいことですが、これからもこの気持ちを忘れず日々がんばって行きたいと思います。